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ドイツ研修旅行に参加して(2)

外国語研修(2023年3月ドイツ)活動報告から転載(学生Yasokawa Suzu)

 2023年3月2日から3月21日まで、総合政策学部のドイツ語選択者2・3学年でドイツ・デュッセルドルフおよびその近郊において海外研修を行った。本稿では、その海外研修にて行ったインタビューや見学によって得られた知見をまとめ、自分の感じたことや考えを示す。


デュッセルドルフ・スタジアム(Sportarena Düsseldorf)

 3月9日、Sportarena Düsseldorfにおいて、ドイツおよびデュッセルドルフにおけるスポーツ政策について、担当者の方から話を聞いた。

 ドイツのスポーツシステムとして、国が提供するもの、NPOのような団体が提供するもの、民間団体が提供するものの3つが存在する。また、ドイツではフェラインという子供からお年寄りまで参加できるクラブ活動のようなものを行う団体が存在するが、登録型フェラインにおいては、集会や裁判を通してフェラインが登録される。これはあらゆるスポーツに適応されている。

 デュッセルドルフでは、空いている土地をどのように使うべきか、などのデュッセルドルフのスポーツ政策について委員会が話し合うことになっている。なかでも、「CHECK D」はデュッセルドルフ独自のプログラムである。これは、主に学校に通う子どもたちを中心に、スポーツの能力を学校で定期的に検査するものである。検査は幼稚園や胎児の時点で行われ(胎児の頃は身長や体重)、偏差値に近い力の表し方のなされた通知表のようなものが個々人に配られる。保護者はインターネットを通じて自分の子どもの力を知ることができるようになっている。また、能力だけでなく、子どもの好みや傾向に合わせて職が勧められるようになっており、最近ではAIも活用している。気に入った写真にいいね、それ以外の写真にバッドボタンを押すことで、AIがその人に合うスポーツを判断してくれる仕組みだ。

 それ以外の例では、代表的なものとして、OLYMPIC ADVENTURE CAMPやKids in Actionがある。前者は、夏休みの最後の1週間、6歳から21歳までの幅広い年齢の子どもたちが無料で参加できるお祭りのようなプログラムである。また、後者は、今回の取材地でもあったアリーナで行われる子どもへのPRイベントのようなものであり、わざわざ各地のフェラインをまわらなくとも、その1つの場所で様々なスポーツを体験することができる。これらのプログラムは、基本的に参加費は無料である。

 取材終了後、アリーナ席を開放してもらい、無人のアリーナを研修参加者で歩き回った。写真は観客席から撮ったアリーナである。



言語教育機関 BiSS-Akademie

 3月10日、BiSS-Akademieにて、インタビューを行った。BiSS-Akademieは、移民やその子どもに対する言語教育専門の機関である。個人的に、BiSS-Akademieの活動は、研修前にある講義のレポートで使用した先行研究に示されていて自分でも調べたことがあったため、非常に興味深かった。プレゼンテーションは「学校における統合と多言語主義について」という内容で話が勧められた。

 ドイツには、「HSU」という「母語に基づいた授業」を指す言葉が存在する。これは、文化的アイデンティティを尊重する目的で、学校法にも明確に定義づけされているものである。デュッセルドルフが位置するノルトラインヴェストファーレン州では、戦後西ドイツにおける外国人労働者が増えたころからの長い移民の歴史があり、子どもたちが自分たちの国に帰ったときに困らないようにするために、統合政策の一環として授業を始めた。ノルトラインヴェストファーレン州は、ドイツの中でももっとも移民の子どもたちに向けた言語教育が発展しており、30か国語の授業が展開されている。10年生には試験があり、義務ではないが、母語の授業を受けた人全員が対象である。この言語の試験の成績が良ければ、英語や他の言語の成績が悪くても挽回することが可能となっている。BiSS-Akademieの方がおっしゃるには、まず、多言語の教育は支援すべきものであり、将来役に立つし、資源にもなるというポジティブな効果がある。そして、母語の授業においては、家族と話すだけでなく、読み書きもできるようにするのが目標である。写真は、担当者の方々からいただいた資料である。


まとめ

 この約3週間の研修旅行は、日本とドイツの物事の考え方の違いや文化の違いを頻繁に感じるものであった。特に、ドイツが移民大国であることは事前知識としてあったものの、かなり多くの移民やその子孫が共生していることが見てとれた。日本では、黒髪黒目で肌の色がベージュである人間を日本人と定義しがちだが、ドイツではどんな見た目であろうともまずはドイツ人であると判断し、そうでなかった場合も即座に英語で対応してコミュニケーションを図ろうとするところに、その移民受け入れの長い歴史の片端を感じることができた。実際に私も基本的には店員や町の人からドイツ語で話しかけられたので、自分が町に馴染めているような気がしてうれしかった。

 また、本稿に記した2つの取材は、ドイツおよびデュッセルドルフが子どもたちに多くの先行投資をしていることがよくわかるものであった。日本だとお金がどうしてもかかってしまうものが基本的に無料であるということは、驚かざるをえなかった。子どもたちにスポーツの可能性を見出したり、多言語主義を尊重するその姿勢は、昨今外国人労働者を多く受け入れ始めてきている日本も何か真似できるものはないだろうかと思った。


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