外国語研修(2023年3月ドイツ)活動報告から転載(学生Okawa Kouki)
研修の目的
ドイツ語を3年間履修してきた私にとって本研修の目的は、これまでの学びの実践として現地のドイツでドイツ語を使いコミュニケーションを図ること、そして現地のドイツ語ばかりの環境に身を置くことで耳を慣れさせ、多角的にドイツ語の語学力を向上させることである。また、ドイツという国はスポーツ界において先進的な国である。というのも、ドイツには私がゼミ活動で取り組んだ日本の総合型地域スポーツクラブやJリーグによる地域活性化のモデルとなった「Sportverein(シュポルトフェライン)」が存在し、100年以上に渡ってドイツの人々のコミュニティと健康を支えているのである。そのため、スポーツを通した地域活性化、社会貢献について学んでいる私にとって、語学研修とは別の大きな目的としてドイツのスポーツ政策やスポーツクラブのありようについて調査をすることが挙げられる。そして、ドイツの食文化や生活スタイルを買い物や自炊、外食などで学ぶことで自分のこれまでの物の見方や考え方を改め、また様々な歴史学習を通じてドイツの歴史から日本の文化や歴史観等を捉え直すことで多角的な物の見方をできるようになるということも目的である。
デュッセルドルフ・スポーツ局
3月9日に訪問した「MERKUR-SPIEL ARENA」はサッカー日本代表の田中碧選手らが所属する「フォルトナ・デュッセルドルフ」の本拠地である。そこで、デュッセルドルフのスポーツ政策について講演を聞いた。その中で、特に「スポーツ機会へのアクセス」において日本では見られない政策や考えを学ぶことが出来た。「スポーツ機会へのアクセス」に関してドイツのSportvereinはそもそも、成立過程が有志を募って興し、議会の承認等を経て成立するものであり、日本のように企業という母体があって存在するものではないため、より地域に密着したクラブであることわかる。それもあり、自律的、内発的にスポーツ空間の提供と充実を図っている。具体的には以下のようにまとめることが出来る。
「CHECK‘D」:3回、子供の身体能力を図ることで子供の運動能力を位置づけし、また結果に応じた運動の提案やSportfereinへの参加の提案をする。そうしたスポーツ実施への参入段階における「何をすればいいのかわからない」というようなハードルを低くしてくれるサポート体制。
インターネット上でのスポーツ提案方策:まず、スポーツを「外でしたいか/屋内でしたいか」や「独りでしたいか/集団でしたいか」、「音楽があってほしいか/音楽なしでしたいか」と言う様な質問にカーソルを移動させて答えることで、自分がどのように運動するのが好きかということがわかるシステムがある。また、より簡易な形として20枚近くの写真が好きか嫌いかで答えるだけでどのような場所でどのようなスポーツをするのか好きであるかという事を教えてくれる機能がある。こうした提案はそれだけでは終わらず、自分に合っているとされるスポーツの教室/体験会がいつ行われるのかがわかり、その場で申し込みまで可能となっている。
メッセ/Sport im Park:年の数回開催し、数多くのスポーツを体験できる。10万人以上の親子が参加するなど、スポーツを知る機会、する機会、始める機会としてスポーツをより身近なものへとすることに役立っている。また、「Sport im Park」という、決まった場所(公園)で決まった時間に決まったスポーツをするという、より草の根レベルでのスポーツ実施政策も行っている。https://sportportal-duesseldorf.de/de/sport/empfehlungen
以上のような政策からは継続的なスポーツ実施やコミュニティ形成の点において、少子高齢化やコミュニティの希薄化の進む先進国の課題に対して非常に効果的な先進事例であると思われた。また、興味関心を持つ段階から、実施、そして継続までの道筋をSportamtが扇動し、草の根レベルではSportvereinらが導いてくれるため、そうしたスポーツへのハードルの低さ、身近さが達成されているからこそ、スポーツへの愛着が強く、サッカーに代表されるように熱狂的なファンの形成の役に立っているのではないかという事が推察された。
Wewelsburg(強制収容所)
3月12日に訪れた第二次世界大戦の際に使用されていた強制収容所は、小高い丘の上にある城を再活用したものであった。この場所で強制労働などが行われ、3人に1人はなくなったそうである。ここで学んだことは普遍的な人としての考え方、歴史を学ぶ価値についてである。ヒトラーの親衛隊SSがいかに結成され、このWewelsburgという町に来たのか、その後どうなったかについて加害者の視点、被害者の視点から学んだ。また、ドーム状の空間では、ドームの1点とその対角にある場所とが音の反響で小声で一方が話しても聞こえるという体験をし、またドームの中央で中心を境に、向き合って声を出すと、正面の人がしゃべっているにもかかわらず、音が上から降り注ぐように聞こえるなど、音響空間の不可思議さを感じつつも、このドームの使用用途を学び、決してこれを悪用してはならないと物事や学問の正しい在り方について深く考えさせられた。
また、こうした歴史学習のなかで案内をしてくださった方の「毒がなんであるかわかって初めて毒を避けることが出来る」という言葉や「歴史にはいいこと、悪いことがある。悪いことは二度と繰り返さず、未来にはいいことを残していきたい」、「すべての人間は人間らしく生きなければならない」というような言葉には暗い歴史をしっかり受け止め、その歴史を繰り返さないという強い意志と同時に、暗い過去のままに風化させるのではなく前向きに歴史とともに生きていくというような意思を感じた。本見学からは日本の歴史観との違いを感じつつ、「歴史を学ぶ」ではなく「歴史に学ぶ」ということを経験できたように思う。
まとめ
本研修では、前述の場所以外にも数多の場所を訪問し、日本では聞けない話や考え、経験をすることが出来た。自分の将来を考えるにあたって、日本国内だけでなく、よりグローバルな視点を持ち考えることができるようになるきっかけとなる研修であったように思う。また、異国の地での自炊や移動、買い物、見える景色、そのすべてが刺激に満ちており、慣れない環境下での生活が自分をほんの少しであるかもしれないが成長させてくれたように思う。今後も、ドイツ語の勉強をつづけ、スポーツの側面においても日本にはないスポーツ政策の勉強や実践を通して、自分の将来を切り開いていきたいと思った。
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